イエウサギはカルダモンの夢を見るか?

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【前半ネタバレなし、後半ネタバレあり】Return of the Obra Dinn プレイ記録

あなたの幽霊船はどこから?

私は「グーニーズ」からー!!(正確にはあれは幽霊船ではない)

 

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お友達に勧められて、Return of the Obra Dinn(オブラ・ディン号の帰還)Nintendo Switchにてプレイしました。

以下、プレイの感想をしたためております。

前半は「どんなゲームなの?」という方に向けてのなるべくネタバレなしの内容を、苦労したところや思い出など、具体的な内容は記事後半にて記します。

 

前半:ネタバレなし感想

①どんなゲーム? 

(Nintendo Store紹介文より引用)

ある保険調査官の体験をモノトーンで描くアドベンチャーゲーム
時は1802年。200トン以上の交易品を積んだ商船「オブラ・ディン号」が、ロンドンから東方に向けて出港した。その6か月後、同船は予定されていた喜望峰への到達を果たさず、消息不明扱いとなった。

そして今日、1807年10月14日早朝のこと。オブラ・ディン号は突然、ファルマス港に姿を現す。帆は損傷し、船員の姿も見えない。これを受け、東インド会社ロンドン本社所属の保険調査官が、ただちにファルマス港に派遣された。同船内を直接調べ、損害査定書を作成するために――。

「Return of the Obra Dinn」は、探索と論理的推理で展開する、一人称視点の謎解きミステリーアドベンチャーゲームである。

 

…いやあ、ワクワクしますね!

もともと「謎解き」という言葉が幼少より大好きだったわたくし、リアル脱出ゲームにここ数年はまっており、「推理力」「試される知識」などといった言葉に弱いのなんのって。紹介文を見もせず「これは前知識一切入れないほうがいいやつ!」と、セールなのをいいことにポチりました。

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②なんだか怖そうだけど?

紹介画像を見た時は「ホラーかな?」と思いましたが、いきなり何かが出てきてびっくりさせる要素はありません。ただし、「なんじゃこりゃあ!?」と、目の前の出来事に多少驚くことはあるかもしれません。が、お化け屋敷無理、バイオハザード無理の私がサクサク遊べた内容ですので、怖がりサンでも大丈夫という点は保証します。あと、音楽が素敵です。船が舞台だけあって、鐘の音や重低音が響く勇壮な音楽、ハラハラする音楽が印象的です。

 

③難しいんじゃないの?

「謎解き」「マーダーミステリー」「リアル脱出ゲーム」「推理小説」「論理パズル」が好きな人はぜひプレイしてください。そういう意味では、難しいかもしれません。困ったら攻略サイトを使うのも手ですが、できるだけ見ないことをお勧めします。

と、言いつつ攻略サイトを見なかった私は「力業」で50%以上解答しちゃいましたが…。(ザ☆脳筋

なお、私のプレイ時間は約11時間でした。

 

④注意点は?

強いて言えば、一人称視点でプレイするゲームなので、画面酔いする人にはお勧めできません。ですが、操作環境の設定で、カメラワークを緩やかにすることができるので、それでましになるかもしれません。私はあまり画面酔いしないタイプですが、視点をせわしなくグルグル動かしていたらちょっと気分が悪くなりました。画面の色もモノトーンなのでつい画面を凝視しがちです。こまめに画面から目を離してストレッチしましょう。

もう一つは、暴力描写があるため、スプラッタにめちゃくちゃ弱い方にもおすすめできません。ちなみにレーティングはCERO-D(17歳以上対象)です。私は実写のスプラッタ映画は絶対に無理なのですが、アニメやゲームは割と平気です(長いこと見てると気分が悪くなることもありますが)。このゲームでも、そういう描写のシーンでは気分が悪くなることはありませんでした。だって画面がモノトーンだからね。

 

…以上より、興味を持たれた方はぜひプレイしてみてください。

 

 

後半:ネタバレあり感想

①50%くらいを「総当たりルーレット」でクリア

謎解きが好きな割に、おつむは伴っていない私。行き詰まることもしばしばでした。そんな時はこのゲームのミソである「正解判定が行われるタイミングは、3人分の正解がそろったとき」を逆手に(?)利用し、例えば中国人四人組やロシア人三人組など、決め手に欠けた人たちを「死因」のみ特定させ、あとは怪しい名前をルーレットさせる、という方法を取りました。でも、そういうのを思いつくのも知恵じゃない!?(じゃないと思う)。後日、攻略サイトでちゃんと全員に「決め手」があることを知りましたが、んなもんわかるかい!!!!特にハンモックの番号は、配信をリアルタイムで観てくれていたお友達が気付いてくれました。あれ見過ごしてたら詰んでたな。

 

②ヘンリー・エバンスに気づけなかった

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ちゃんと書いてあったじゃーん!!

9章「脱出」の失踪者4名について、結論を出せないまま一度下船しました。バッドエンディングの手紙をみて、「やられたーーー!!」と思ったのは私だけですか…?

大事なことほど最初に書いてある、リアル脱出ゲームの基本をおろそかにした結果でした。

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これを読んだ瞬間「やられたーーーーー!!」

その後きちんと手記を埋め、トゥルーエンディングを見ました。おそらくこれこそが大謎だったのでしょう。

 

③あってよかった雑学の知識

身元特定にあたり、ロシア語や中国語(台湾語もあるよ)、イギリス英語やアメリカ英語についての知識が役立ったこともありました。フォルモサの王族リム(女性)は家来から「小姐(お嬢様など、身分の高い女性の呼称)」と呼ばれるのですが、この発音が「しゃおちぇ」でなかったのに引っかかった私。後日「フォルモサ(Formosa, 福爾摩沙)」は台湾のことだと知って納得。あとはマリンボーダー着てる=フランス人じゃね?とか、パプアニューギニアの方ってタトゥー入れる文化なかったっけ?とか、かなり適当な雑学を元におこなった推測が当たったことも。

 

④「死の瞬間のドミノ倒し」がさらなる事実を見せる不思議な感覚

あの懐中時計のギミックでサイコメトラーの気分を味わえたのが楽しかったです。死の瞬間、何が聞こえ、その場で何があったのか。今でこそ防犯カメラやドライブレコーダーなどで事件の瞬間を垣間見ることはできますが、その静止した瞬間を観察し、歩き回るという経験は新鮮でしたし、何より「その場にある新たな死体からさらに時間を移動できる」というのも、入れ子構造というか、ちょっと違うけど映画「インセプション」のような印象でした。

また、乗員ではない人物や、人間ではないものの「死」からも時間を移動できた時は「おお!」と感動。

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このゲームに出演する唯一の「ジョン・ドゥ(身元不明者)」。成仏してクレメンス。

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化け物の死骸からも手掛かりが!

ある者は怖気づいて逃げ、ある者は果敢に戦い命を落とし、ある者は己の欲望のために行動した結果、乗員ほぼ全員が無残な死を遂げる。そんな死の瞬間を、淡々と調査する保険調査員(忘れがちだけど、プレイヤーは東インド会社の保険調査員なのよね…)のギャップよ。スタートが起承転結の「結」から始まって起→承と続き、最後は「転」で終わるストーリーの進行もよかった。

 

⑤残った謎は自分で考えることへの是非

最早「後味悪い」とか「考察系」というワードは一般的になっていますが、このゲームも補完できていない箇所がいくつかあります。たとえば「エバンズ医師が懐中時計を手に入れた経緯」や「懐中時計のギミックの由来」、「あの貝殻は何のために船へ持ち込まれたのか」「三等航海士がなぜ呪いの解き方を知っていたのか」などなど。

ですが、実際ってそういうもんなんだよなぁ。世の中の事件は、客観的証拠でしか事実を突き止められない。当事者の証言だって記憶違いや勘違い、はたまた証人が嘘を付いたりしたら真相は闇の中。「真実と事実は違う」とはよく言ったものです。

そしてこのゲームの主人公の目的はあくまで保険調査のために乗員の死亡理由を確認することであり、懐中時計の不思議な力を使って事件の断片的な光景を垣間見ているのにすぎない。完全なストーリを知ることは出来ないのです。プレイヤーを突き放すような淡々としたThe Endは、かえって不思議な後味を残しました。

 

⑥死因は複数の正解がある

人物の死因を推測するにあたり、複数正解が設けられていることがあります。そもそも死体が見つからない者は推測するしかない。船外に転落したか、化け物に食べられたか、爆発四散して跡形もなくなったのか、プレイした人一人ひとりの答えが違ってても「はい全員正解」というのもリアルです。だって死体がないんだもん。

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ラストのまとめも淡々としている。

あれだけ生々しい凄惨な現場だったのに、最後に残るのは書類のみ。しかしページをめくるごとに、全員の最期の姿(生きてる人もいるけど)がまざまざと思い出されます。

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サインをして終了。

さてさてReturn of the Obra Dinn、たいへん面白いゲームでした。ぜひクリアした人たちと輪になって話し合いたい一本でしたね。それでは、バイならー